【活用事例】「SmartBuzz」
【活用事例】「SmartBuzz」
タグ: MCPCナノコン, 第4回ナノコン応用コンテスト
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- 2023-12-02 22:35 #14147YUTA参加者
1. 概要
SmartBuzzは、車内の閉じこめを検知し、LINEを通じて保護者に緊急通知を行うシステムです。
開発の背景となった社会課題に着目し、3章に分けて説明します。1.1 背景となる社会問題
2022年、静岡県牧之原市で幼稚園バスで3歳の子供が置き去りになり、死亡する痛ましい事故が発生しました。
その後も幼稚園バスだけでなく親が運転する乗用車でも、子供が車内で閉じ込められ熱中症で亡くなるという悲しいニュースが相次いで起きています。1.2 既存のシステムとその課題
1.1節で紹介した事故を受け、国土交通省は「送迎用のバスの置き去り防止を支援する安全装置のガイドライン」を発表しました。そして今年、2023年4月には全国の保育所や幼稚園などの送迎バスなど全てに対して置き去りを防ぐための安全装置の設置が義務付けられました。義務化を受け、現在様々な閉じ込め防止システムが開発されています。システムの一例として、以下のようなものがあります。
・最後部座席に置いてあるボタンを押すまでブザーが鳴り続ける機能
・万が一置き去りが起きてしまった場合においてカメラや超音波センサなどで車内にいる子供を検知し、あらかじめ登録してある連絡先に連絡されるシステム
これらのシステムの課題として、自家用車に対応していないということが挙げられます。先述のとおり、子供の置き去り・閉じ込め事故は親が運転する自家用車においても多く発生しています。そのため、幼稚園バスだけでなく自家用車に対しても導入が容易なシステムも、選択肢の一つとして存在すべきであると考えられます。1.3 Leafonyで今回実現したいこと
1.2節で説明した背景を踏まえて、金銭面及び施工面において、自家用車でも対応可能な閉じ込め検知システムを開発しました。本システムは車内モジュールと携帯用モジュールから構成されています。施工に必要な処理は、車内モジュールについては車内のシガーソケットに接続するだけ、携帯用モジュールについては子供の首にかけるだけとなっており、一般家庭でも容易に導入することができます。このシステムとLeafonyの親和性は、以下のことが挙げられます。
・小型マイコンであるLeafonyを利用することで、車内モジュールをシガーソケットの大きさに小型化しただけでなく、携帯用モジュールを子供の通園の邪魔にならない大きさにすることができました。
・多様なセンサーを搭載しているLeafonyを携帯することで、閉じ込め検知に加え外出時の熱中症リスク推定を行い、多様な緊急連絡の必要性に対応しています。
・安価なナノコンであるLeafonyを活用することで、一般家庭における導入時における金銭コストの低減を実現しました。参考として、競合となる従来の閉じ込め検知システムの価格は約9万円です。製品イメージ
2. システム詳細
2.1 システム構成SmartBuzzは、車内モジュールと携帯用モジュールの連携によって車内閉じ込め検知及び熱中症リスク推定結果に基づく緊急連絡を実現します。閉じ込め検知に関しては、車が走行中か停車中かを判定する必要があります。そのため、車内モジュールがシガーソケットから電圧を取得し、エンジンが動作しているかどうかを判定します。エンジンの動作状況についてはBLE通信によって、周辺の携帯用モジュールへ送信します。BLE通信を受信した携帯用モジュールは、車内にいる子供が持っているという前提です。携帯用モジュールは、停車中であることを受信している状況であれば、車内にいると判定します。それと同時に、暑さ指数の推定や車内の温度上昇の検知、熱中症のリスク推定を行います。これにより、子供に危険が生じうると判断した場合、あらかじめ登録した連絡先へとIFTTTを経由したLINEの緊急連絡を通知します。
2.2 作品外観
左:車内モジュール 右:携帯用のモジュール3.機能一覧
・熱中症のリスク判定
熱中症リスクは気温だけで決められるのではなく、湿度や周囲の環境によって大きく影響されます。そうした熱中症のリスク判定として総合的な指標となるのが熱中症指数(WBGT)です[1]。WBGTの算出には気温、湿球温度、黒球温度の3種類の温度を用います[2]。そのため、Leafonyで正確にWBGTの算出を行うためには外部のセンサなどを使用する必要があります。そこで、室内用ではありますが温度と湿度でWBGTを簡易的に推定する図を使用して、Leafonyで検知した気温と湿度からWBGTを算出し熱中症のリスクを判定しています[3]。
・車内閉じ込め検知
車内の閉じ込め検知には3つのトリガーを採用しています。・温度上昇による検知
JAFの実験によると、真夏の炎天下でエアコンが稼働していた車内の温度は、エンジ ン停止後5分で5℃上昇し、15分後には熱中症指数が危険レベルに達することが確認されています。このデータを基に、5分以内での5℃の温度上昇とエンジンの停止を同時に検知した場合、車内に閉じ込められている可能性が高いと評価しています[4]。・WBGTによる温度基準域超過
WBGTの温度基準域が厳重警戒を超え、かつエンジンが停止している場合、車内に閉じ込められている可能性が高いと判断しています。・エンジン停止後の滞在時間
エンジンを停止してから7分以上車内に滞在している場合、閉じ込めのリスクがあると検知しています。こちらは国土交通省が置き去り防止を支援する安全装置のガイドラインに明記されている「運転者等が車内の確認を怠った場合等には、速やかに車内への警報を行い、15分以内に車外への警報を発すること」という要件に準拠し、誤検知をしない程度である閾値を7分として考え設定しました[5]。・LINEへの通知
LINEへの通知は、IFTTT[6]を使用して行います。IFTTTとは、異なるソーシャルメディアやプラットフォームを連携させるWebサービスです。携帯用モジュールに組み込まれている「LTE-M King M」のLTE-M通信機能を使用し、IFTTTで作成したトリガーにHTTPS Requestを送信する仕組みとなっています。
メソッドはPOSTを使用し、POSTするデータは、LINEで通知するメッセージ文です。(例えば、閉じ込められているのを検知した場合は、「お子さんが、車内に取り残されている可能性があります。」という文をPOSTするデータに格納します。)
4. 工夫点
今回開発したシステムには、大きく分けて3つの工夫点があります。・WBGTは気温、湿球温度、そして黒球温度の3つの要因を考慮した指数です。しかしLeafonyではこれらの値を取得することができないため、WBGTを簡易的に計算するための推定図をプログラム上に使用することで、具体的な3つの要因を直接計測することなく、ある程度の推定値を得ることを可能にしています。このようなアプローチで、Leafonyが持っている限られたセンサーの能力から目的を達するために工夫を行いました。
・車内の閉じ込め検知の場合において、単に車内の温度変化を監視するだけでなく、エンジンの状態や車内にいるかどうかの情報も組み合わせての判定を行っている点は、検出精度を高めるための工夫であると言えます。
・通知部分の工夫として、IFTTTの導入によりLINEとの連携を容易にしました。これはサーバー側の実装を既存のサービスで完結させ、開発コストを削減することでモジュールの開発に専念することができたと感じています。
5. 今後の展望
今回の開発コンセプトは、スマート閉じ込め検知システムでした。今後は、閉じ込め検知の要件に加えて、子供の様々なリスクを検知した上で報知するシステムに拡張可能であると考えます。Leafonyは多彩なセンサと連携可能であるため、そのリソースを最大限活用し、通学中における転倒検知や一定時間以上の停止検知などが可能であると考えます。これらの機能を通して、子供の安全保護及び防犯機能を有する多機能防犯ブザーとして展開可能です。多機能防犯ブザーの実現により、広い範囲で子供の安全に貢献するシステムになると考えています。6. 動画
参考文献
1. https://esinc.co.jp/column/wbgt/ ↩︎
2. https://www.pref.saitama.lg.jp/cess/cess-kokosiri/cess-koko21.html ↩︎
3. https://seikishou.jp/cms/wp-content/uploads/20220523-v4.pdf ↩︎
4. https://jaf.or.jp/common/kuruma-qa/category-trouble/subcategory-prevention/faq250 ↩︎
5. https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha07_hh_000433.html ↩︎
6. https://ifttt.com/explore ↩︎
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